2010年1月17日日曜日

Suicaコインロッカーで見えた、アトムのメリット

昨年暮れの31日、コロプラとラブプラスに共通する、新しい時代のマーケティング手法というタイトルで、前後編にわたるエントリをアップしました。
内容はアトム財(実際の物)とビット財(デジタルコンテンツ、サービス)を組み合わせることで、ユーザーニーズを最大化することが今後肝要になってくるだろうというもの。
アップしたのが大晦日だったのが悪かったのか、最初は読んで下さる方やブクマ数も少なかったのですが、年明けには@yukawasaさんがご紹介して下さったのを皮切りに、色々な方に読んで頂けたようで大変嬉しかったです。有難うございました。

上記エントリの後編では主にアトム財の短所と、ビット財の長所がそれをいかに補うかという話を書きました。
今回もアトムとビットの話なのですが、今回はこれまでアトムであったものがビットに取って変わられた事例を題材に、アトムの良さやメリットを考えてみたいと思います。
その題材が、タイトルにもある「Suicaコインロッカー」です。


JR山手線を使う人には結構馴染み深いかと思いますが、「Suicaコインロッカー」はその名の通り、Suicaを使って借りることが出来るコインロッカー。
もちろん支払いもSuicaで可能ですが、ポイントはSuicaが鍵になること。
鍵というアトムだった部分をSuicaというビットに置き換えたんですね。

SuicaのようなFelicaカードが鍵になること自体は今やさほど珍しいことではありません。
社会人の方々には社員証が鍵を兼ねているという方は大勢いらっしゃるでしょうし、
学生でも最近は学生証にFelica機能が付いていることも珍しくなくなりました。
ですから、コインロッカーでも鍵がSuicaになるというのは一見便利な気がします。
また、製造元であるアルファロッカーシステム社の製品案内を見ても、ビットだからこそ可能になった機能が盛り込まれています。

それでも僕が実際にこのコインロッカーを使おうとした時、2つの点で不便さを感じたのでした。

空いているロッカーが分かりにくい
普通のコインロッカーであれば、開いているロッカーには鍵が刺さっています。
当然です。だってロッカーを使っている人は鍵を持ち歩いているんですから。
これが、Suicaロッカーだと、こうなります。



どこのロッカーが空いているか分かりますか?
一応一つ一つのロッカーにはランプが付いており、その点灯によって空き状況が分かるようになっているのですが、ランプが小さいこともあり、遠くから見た時にはほとんど分かりません。
これなら鍵が付いている方が分かりやすいですね。

荷物を預けたことを忘れやすい
これは、僕が最初にこのSuicaコインロッカーに荷物を預けた時に実際にあったのですが
目的地に向かう途中に荷物を預け、その後帰りにロッカーで荷物を取り忘れてしまったのです。
これは単純に自分が忘れやすいことが原因と言われてしまえばそれまでなのですが(苦笑)、
普段ロッカーに荷物を預けた時には僕は必ず左ポケットに鍵を入れるんですね。
で、その鍵がポケットに入っているという感覚に頼っていたわけです。

結局荷物は次の日に取りに行って事なきを得たのですが、
このような事が頻繁に起こるようではコインロッカーとしてはあまり良い結果とは言えません。


さて、Suicaコインロッカーに関するこれらの経験は、扉を開けるためだけでなく、
空き状況のサインとリマインダという、我々が今まで意識していなかったアトムとしての鍵の役割
を顕にしたと言えます。
今後、これまでアトムであったものがビットに置き換わる事例は増えて行くことが予想されますが、
その際にはこういった「その状況においてアトムが果たしている二次的な役割」についても考えなければならないでしょう。
この役割を考えた上で、それでもビットに置き換えるメリットがあるのかどうか。
或いはそのメリットがあるのであれば、二次的な役割も同時にビットに置き換えることが出来ないか。
これらを考えることが重要です。

ちなみに、最初にSuicaコインロッカーを僕が使ったのはもう2年以上前のことなのですが
僕は、その後Suicaコインロッカーをほとんど使っていません。
結局普通のコインロッカーの方が使いやすいんですよね。

ビットというのはあくまでも手段であり、これを使うことが目的ではありません。
技術先行ではなく、ビットを使う意義をよく考えた上で活用して行く必要がありそうです。

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